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山小屋の仕事に就き早16年目のところで小屋番を卒業。カタギになるつもりが縁あって甲斐駒ヶ岳の小屋番に。山での事よりも下界での事、音楽の事、くだらない事が多いブログです。
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2014年03月25日

祖母と田舎

20日の晩から家族三人で長距離ドライブの出掛けた。

三連休、私の山小屋仕事が始まる前に、家族でどこか遊びにいこうと話していたが、祖母が入院して居ると話した事で「じゃあ広島にいこうよ」と妻が言ってくれた。感謝。
新幹線も飛行機も時間を節約するには有効だけど、降りてからの足や運賃を考えるとやはり車でとなった。

軽自動車ではつらいが気合いだ。
祖母のお見舞いと、妻なっちゃんの実家への顔出しと、最後の家族旅行が決まった。
祖母が脳梗塞で入院していると聞いたのは今年の2月。私が小笠原にいるとき。
しかし入院はもっと前からの事だったらしい。



現三原市、旧久井町の母の実家には、中学くらいまでの夏休みはほぼ毎年遊びにいっていた。

いとこも歳が近く遊ぶには事欠かない。
何も無い田舎の風景が中途半端な都会に育った私には新鮮だった。
背中に山を背負った大きな古い屋敷、真っ暗でオバケが棲んでいる蔵、魚の泳ぐ澄んだ川、眼を開いているのか瞑っているのかわからない闇の夜、それを全く怖がらない従兄弟、そこを飛び交うホタル、大きな庭でのバーベキュー、格好よく思えた聞き慣れない広島弁。
何も無いどころか、都会に無い物がたくさん刺激的だった。
そしていつもエセ広島県人となって帰って来た。
毎年いくのが楽しみだった。

父は法事以外は行かず、母と姉の三人で行っていた。
寝台列車「さくら」で行ったり、盆の時期の帰省ラッシュで新幹線のチケットが買えず、なんと新幹線グリーン車で行った事もあった。
行っていた、と書いたけど、この歳になれば「行かしてくれていた」にやっと気がつく。
二十歳を過ぎて自分で生活するようになると、すっかり足も遠のいてしまった。
年に一回の事とはいえ、三人の列車代は大きかったと思うし、父がなかなか行けないのも、家庭を持った今の我が身ならいろんな意味でよくわかるようになった。
そう、オヤジはいろいろ大変なんだ。

行けばおじちゃん、おばちゃんはとても良くしてくれた。食事の支度も大変だったろうと今思う。

おばあちゃんも優しかった。満面の笑顔で迎えてくれた。

今は亡き群馬の父方のばあちゃんも、母方の広島のばあちゃんも、「昔は厳しくておっかなかった」とよく聞いていたが、想像できないくらいやさしかった。
冗談も面白くて一緒にいるのが心地よかった。

20年以上前から眼が見えなくなり、耳もほとんど聞こえなくなった広島のばあちゃんだったが、足腰は強く白い杖を振り回しながら歩いていた。盲目になっても伏せる事無く身体を動かしていたしできる事は自分でやっていたと聞いた。


「この家の事なら眼はいらんけえ」

と、勝手知った家で眼が見えるように振る舞い、

「手で触れば甘いイチゴかわかるけえ」

と畑でイチゴを捥いで来てくれたりした。すっぱくておいしいイチゴだった。

還暦を過ぎて原付の免許をとってスクーターを乗り回していた。
免許の無い頃の私が

「おばあちゃんバイク乗っていい?」

と聞くと

「いちいちきかんでええけえ、どこでも乗って行きんしゃい」

と言っていた。
生きる力の漲った元気な楽しいばあちゃんだった。

ここ20年で3回しか会いにいかない、祖母不幸で不義理の男にはそういうばあちゃんだった。




我が家の愛車エブリイ君で15時間かけて広島へ。
分家のおばちゃんに病院に連れて行ってもらい、すっかり痩せてしまった祖母に会えた。
前回、三年前に祖母に会った時は自宅でお茶を飲みながらだったから、状況の違いには息が詰まってしまった。

意識のある時と無い時がある。こちらの話が通じる時とそうでない時がある。親しい人を認識できない時もある。
病院に向かう道中、おばちゃんから聞いた話に納得し、息の詰まりそうな病院の淀んだ空気の中での久しぶりの再会だった。
鼻と首から管をつながれ、それらを引き抜かないよう両手にオモリの付いたグローブをはめられていた。三年前の面影をしばらく探さなくては、私の知る祖母とすぐには一致しなかった。

「お母さん、東京からキー君が来おってですよ!わかりますか!」

と、祖母の耳元でおばちゃんが叫ぶと、眼を大きく見開いて、何か叫ぶように口を開けた。
冬山用のオーバーミトンの様なグローブで身体に付いた管を外そうとしている。
煩わしいグローブを口で噛んで取ろうと必死に動いている。
何か言おうと口を動かしている。
おばちゃんは笑いながらそれを優しく制していた。


私も祖母の耳元で何か言いたいが、頭の中には

「おばあちゃん元気ですか!」

とか、トンチンカンな事しか浮かばない。
元気な人がここでこの状況のはずは無い。
言葉が出てこなかった。

「キヨフミです。ご無沙汰してすみません、妻のなっちゃんと娘の木菜と来ました」

と言ったら

もだえるように身体を動かし、一息ついて
擦れた小さな声で振り絞るように

「あ、り、が、と、う」

と言ってくれた。わかってくれた。この日はわかってくれる日なんだ。

祖母の素肌の部分の腕を触ってここに居る事を伝える。会うのが二回目のなっちゃんも触ってくれていた。

木菜はベットの手摺からジッと覗いていた。
ひ孫の手も感じてもらいたかったが、木菜に頼んだら顔をシカメて逃げてしまった。
しばらくするとまた足下で隙間から覗いていた。
何度か頼んだがまた逃げる。気持ちはわかるから無理には言わなかった。

15分くらいのお見舞い。
最後におばちゃんがグローブを外してくれるよう看護師の方に頼んでくれた。
最後にしっかり手を握る事ができた。祖母も納得したように落ち着いた。

いつの間にか隙間から木菜が手を伸ばしていた。祖母の手をしっかり握っていた。涙と鼻水でグズグズになった父ちゃんを見て哀れんでくれたか。ありがと。

「じゃ、帰ります」と言うと手をゆっくり左右に動かした。

「ほたらまた来ますよ」とおばちゃんが言ったが、わたしは言えなかった。言わなかった。約束できない事を言うのは少なくしたい。


姿は変わってしまったが、生きる力はまだ衰えていない。
凄まじい力を感じた。

おばちゃんは

「一時はダメかと思ったんじゃけど、そこからここまで復活したんよお」
「お母さんの生きる力はホンマに驚異的なんよお」
と話してくれた。






分家に戻り、少しゆっくりさせてもらった。幼少の頃の話、互いの近況を笑って話した。
外を見るとザンザカ雪が降っていた。

「何もこんな時に降らんでもねえ」

とおばちゃんは言ったけど、わたしは歓迎されてると思った。


岡山県に近い久井から、山口県に近い廿日市市のなっちゃんの実家に最後のドライブ。雪はすっかり止んでしまった。
不眠だったので早くこの日の運転を終わりにしたかった。なっちゃんが運転を代わってくれた。



今回の久しぶりに会った祖母の事。
こんな風に書くと『優しい孫と祖母との再会』に思えるが、正直気持ちは複雑でもある。

祖母はかわいい孫が来てくれて嬉しいだろうが、田舎の人にはどう映るのだろう。
たまに来て、変わり果てたおばあさんに会って喜んでいる事を安っぽく見えるのではないだろうか。
冷ややかに感じるのではないだろうか。
何もこの事で苦労してないのに、久しぶりにおばあさんの手をまるで『絆』のごとく手を握り、「おばあちゃん!」なんて・・・・規正の安売りドラマみたいだと。
こらえていたが、堪らず涙が止まらなくなってしまったが、この涙も安っぽい物ではないか・・・・と。
断っとくが、今回世話になったおばちゃんは、そんな事を思う様な人ではない。14年ぶりの再会を喜んでくれたし楽しんでくれた。

しかし私の中のもう一人の私は、冷ややかで、そして臆病だ。










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この記事へのコメント
ヅメさん。
読んでて涙がとまりませんでした。
そんな姿を不意に嫁に見られて笑われた…何か色々書こうとしましたがまとまらず…複雑なおもいですが、ただヅメさんに「大丈夫ですよ!」って言いたい。。。
お書きになりましたのは… むー at 2014年03月25日 13:55
むーちゃん

取り留めも無い長文を読んでくれてありがとう。

お互い、涙腺の締りがなくなってきたね。
お書きになりましたのは… きーちゃんきーちゃん at 2014年03月25日 15:15
田舎の人にどう映ろうがいいじゃん。(妄想の領域だと思うけど)

俺は俺。俺の気持ちは俺がわかっていればいい。

広島に行こうよ!と言ってくれたなっちゃんに感謝を感じたのだろ?

それが北爪さんの本心でしょ?

たとえ、自分のやったことを安売りドラマと思ったとしても、ドラマの何が悪いのだろう。そんな自分がいたっておかしくない。

どっちも自分だ。

いろんな人に映る自分を全部気にしていたら、超疲れる。

人の数だけ見方はあるもんね。

と、自分にも言っている。

人は鏡・・・

ふふふ。
お書きになりましたのは… 迷惑かけ人 at 2014年03月26日 22:17
迷惑な人さん

返事、面倒と思っていたら忘れてしまいました。
遅くなりまあして、ごめん。

飲んでる?

楽しんでる?

俺はソコソコやってるよ!
今度コソコソやりますか!!

ええ!!
お書きになりましたのは… きーちゃんきーちゃん at 2014年04月01日 01:20
 
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